
建築作品
「理想の建築」とは何か ── 。
その答えは、人の数だけ存在します。
私たちが目指すのは、
“その人が心から自分らしくいられる空間”。
単に美しいだけでも、
機能的なだけでもなく、
その人の個性や価値観が自然とにじみ出る、
心地よい場所を創りたいと考えています。
建主の想いと周辺環境、
そして設計者の創造性が一つになって、
はじめて創り出される建築
── そのありのままの姿を、
どうぞご覧ください。
Y-HOUSE
─ 森の遊覧船 ─
住宅設計

南側外観見上げ
静岡県東部、スイカや大根が名産の山中に、自然とともに暮らせる住まいが完成しました。
施主は、ご実家の農業を継ぎながらも、現代的で快適な生活を求めてこの家を依頼されました。
1階には農作業場や沢庵漬けの倉庫を配置し、2階に上がれば、登り梁の美しいリビングが広がり、大きな掃き出し窓には四季折々の自然が映ります。
南北をつなぐ広いバルコニーには、風や光を贅沢に取り入れる設計に。農業と日々の暮らしを両立しつつ、自然の豊かさを存分に味わう——そんな理想をカタチにした住まいです。
外観
南側外観
建物の中央を開放的な吹き抜け通路が貫き、まるで遊覧船のように周囲の景色を眺められる構造になっています。

南側外観
夏には、木陰でお子さんたちが収穫されたスイカを食べます。洗濯物や布団は2階デッキに干します。
1階作業場
Y-HOUSEは、住宅でありながも、先代から続く農園を兼業農家として継ぐための拠点でもあります。もともと敷地内にあった納屋兼住宅が老朽化したため、解体して新築することにしました。
1階には大根を沢庵漬けにするための樽の保存倉庫や、日々の農作業や出荷作業が効率よく行える広々とした作業場を設けています。農作業エリアと住宅エリアの動線を分け、泥等を住宅内に持ち込まないよう配慮しています。
玄関
来客用玄関正面
農作業エリアとは分けて設けた来客用の玄関。1階玄関は外壁にガルバリウム鋼板の小波板を使用し、現代的でシャープな印象に。シンプルな美しさを持つ木製の玄関ドアとの組み合わせで、農園の自然豊かな環境とも調和。すっきりとしたデザインが、訪れる人を気持ちよく迎えます。

来客玄関内観

来客玄関(照明点灯)
柔らかな間接照明とスポットライトを採光窓と組み合わせることで、昼と夜で異なる雰囲気の玄関に。靴収納棚は床から浮かせ、空間を広くすっきりと見せています。壁面に設置された小さな隙間はポスト。郵便物や新聞は下に落ちずに収納棚の上に乗ります。収納棚の上には、一輪挿しやドライフラワーを飾るカウンターを確保しています。
リビング
デッキ越しに縁を望むリビング

リビング
2階に上がると、登り梁をあらわしにした開放感あるリビングが広がります。大きな掃き出し窓を設けることで、明るく風通しのよい空間を実現しました。木々の緑や紅葉の美しさを感じながらくつろげる設計です。
ダイニングキッチン
リビングからキッチン側のカウンターを見る

リビング西側を見る
ダイニングには、カウンターテーブルを設置。収納棚と一体型とすることで、キッチン周りの家電類がきれいに収まります。また、キッチンでの調理から食卓での食事までがひと続きになることで、日常の動きが快適で効率的に。カウンターテーブルはキッチンの補助台や事務作業、子どもたちの勉強にも利用できます。ペンダントライトの黒いシェードは、ナチュラルな室内空間に程よいメリハリを生んでいます。
バルコニーデッキ
2階南側デッキ
バルコニーに設けた深い庇(ひさし)は夏の日差しを遮りつつ、冬には陽光がしっかり室内に差します。斜めの柱は、この庇を風の吹き上げから守るとともに、デッキの頭上スペースを広げて毎日の洗濯物干しを快適に。

西側からの見上げ
2階のバルコニーデッキの下部は深い軒下になっており、1階の農作業エリアから上を見上げても直接生活の様子が見えない設計。農作業部門と住居部門を1階と2階に分けてゾーニングすることで、視線を遮りプライバシーが保たれ、農作業と暮らしを切り分けることができます。
子ども部屋
子ども部屋
2階の子ども部屋からも、掃き出し窓から緑が眺められ、バルコニーに出ることができます。
2階平面図
LDKを住宅の中心(結節点)と定義し、各室へ自由に行き来することができます。洗濯機からユーティリティ(家事室)、バルコニーの物干しまでの動線を最適化したことで、無駄な動きを減らし、洗濯等の毎日の家事が効率的に行えます。